本日は、今年1月に発売した洗面ボウル《シガラキコンクリ》の開発秘話のご紹介です。
大阪ショールームに展示された《シガラキコンクリ》
皆さんは、”信楽焼”をご存じでしょうか。滋賀県甲賀市信楽で鎌倉時代に発祥した、日本六古窯の1つに数えられる陶器です。そんな歴史ある信楽焼を現代の建築やくらしに取り入れるべく、窯元さんと当社で共同開発したのが《シガラキコンクリ》です。今回は、商品の企画・開発を担当した当社商品部の多田に開発秘話を聞いてきました。是非最後までご覧ください!
本物の質感を楽しめる洗面ボウルを作りたい
―どのような経緯で《シガラキコンクリ》の企画が始まったのでしょうか。《シガラキコンクリ》を企画・開発した、当社商品部の多田
この企画自体は2020年頃に開始しましたが、実は10年以上前からコンクリートの質感の洗面ボウルを作りたいと考えていました。建築家の方々がつくる空間に、本物のコンクリートの洗面ボウルを置いたら格好良くなるだろうなと。しかし、コンクリートの質感の洗面ボウルというのは、国内の市場にも海外の展示会にもなかなかありません。コンクリート製にすると水漏れや重量の心配が出てしまうからです。もちろん、グレーカラーやコンクリート調の洗面ボウルを作ることは可能です。しかしプロの皆様は、それを超えた本物の質感を求めていらっしゃると思うんですよね。
企画当初のスケッチ
どうにかコンクリートの質感を表現する方法が無いかな…と考えていたところ、当社の営業担当の者が信楽焼の窯元さんを紹介してくれました。家業を継いだご兄弟が営まれている窯元で、新しいアイデアにも非常にオープンな方々でした。話をしているうちに意気投合し、信楽焼で洗面ボウルを作りたいと思いました。共同で開発していただいた窯元さん
窯元さんと追い求めた理想の質感
―開発を進める中で、どのような苦労がありましたか。最も悩んだのは、やはり質感の部分です。
一般的な信楽焼の製品は、生産過程で塗布する釉薬(うわぐすり)によって、表面に艶が生まれます。この艶感ももちろん美しいのですが、今回目指していたのは、艶のないマットな質感でした。防水にするためには釉薬が必要不可欠であり、この艶感をどう抑えるかが今回の難題でした。
試行錯誤したマットな質感
どうしようかと考えていたところ、窯元さんの工場に素焼きのような手触りの小皿を見つけたんです。「これは釉薬を塗っていないのですか?」と尋ねると、「塗っていますよ」と。「これで洗面ボウルができますか?」と聞くと、「できると思いますよ」と(笑)。これなら作りたいものが実現できるかも、と嬉しかったですね。
ヒントとなった素焼きのような風合いの小皿
その後、窯元さんが材料や色の調合を何度も試してくださり、その小皿と同じような質感の洗面ボウルを実現できました。安定して生産できるよう、一緒に試行錯誤してくださった窯元さんには、とても感謝しています。完成した《シガラキコンクリ》
―この質感を実現するのに苦労があったのですね。そうですね。マットといっても、ザラザラしすぎるとお手入れが大変になる…と販売スタッフの皆さんから聞いていたので、掃除がし易い絶妙な質感を探して、辿り着きました。
お手入れもし易いさらさらとした手触り
黒子に徹するモノづくり
―多田さんが商品を作る際に大切にされていることは何でしょうか。最近はデザインに凝った商品がたくさんあると思いますが、個人的には空間の主役になるような商品ではなく、黒子に徹するデザインを心掛けています。私のデザインを見てほしい
というよりも、建築家の方々の作る空間の引き立て役でありたいです。
サンワカンパニーというと、エッジの効いたシャープなデザインをイメージされる方が多いと思いますが、実は《シガラキコンクリ》のように素朴で優しい風合いの商品もあります。そんな歴史ある工芸品を日常生活の中で楽しんでいただければ、非常に嬉しいです。
《シガラキコンクリ》モルタル
―多田さんありがとうございました!商品の詳細は、下記の商品ページからご覧ください。●《シガラキコンクリ》